OCU

奈良駅近くのビルの狭間にある一軒家をイタリア料理店にコンバージョンするプロジェクト。
イタリアの田舎町で修行をしたシェフは、ここにピザ窯を利用したイタリア郷土料理店を開店する事と決めた。彼の出す料理は食材の素材を活かしたもので決してデコラティブなものではない。そして出来るだけ近場で取れる素材を使い料理を提供している。
私達も彼の思想を空間表現すべく全てを素朴な素材で作り上げる事に徹した。
豆のような平面形をもつ特徴的なカウンターは、草木染め(セージ)を施した和紙で包まれていて、シェフを中心に6人の客が眼を合わせて話す事ができるようになっている。また床は全て畳としている。
シェフが目指したもう一つの像は、人間味溢れるレストランだったと思う。
コロナを乗り越えて、ようやく人が集い食事を共にできるようになった。
直接会わずともコミュニケーションが取れるこの時代に、食事を囲んで集う幸せを、畳の床と和紙のカウンターに触れるという身体性を通して、より深く感じさせてくれると考えた。
設計: ひとともり 長坂純明 北川和正(アシスタント) Randi Marie Jensen (Loöwe)
照明計画: 村西貴洋
施工: Loöwe
写真: 河田弘樹